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何とも贅沢なことですが、漢方薬の原料となっている貴重な薬草を使い染めた製品です。当初、色見本のつもりで10色のビーカー染めの試作をしました。茜草、槐米(エンジュ)、緑茶、烏龍茶、柿渋、クチナシ、藍、南京ハゼ、蓬(よもぎ)、紅茶などがその原料となりました。
●草木染めの色の美しさ
私は当初、その中から3~5色の色を選び発売しようと考えていました。ところが、試作が出来上がり、その色を手にした私は、はたと悩んでしまいました。なんと、色が選べないのです。自然に由来する色の美しさに優劣はなく、洗うことで変化していく色も、季節の移ろいの抒情を感じさせてくれるのでした。茜草のサクラ、槐米のパープル、緑茶のベージュ、烏龍茶のダークグレイ、南京ハゼのモスグリーンなど、私は結局どれ一色も没にする事が出来ず「全色作ります!」と社員を驚かせることになったのでした。媒染剤を使用しない草木染めです。使用後の染め液が流れ込む池の端では、柳の木が冬でも青々と生い茂り、池の中では鯉が元気に泳ぎ回っていました。私は「これぞまさに錦鯉だわい!」と得意げに笑って話すと、中国浙江省のその工房の真面目な職人さんには、その冗談が伝わらなかった様子で、「この鯉の色はこの染料で染まった訳ではありません。」と大真面目に返され、またまた大笑いとなったものです。懐かしい思い出です。
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